ドライブ日和の運転中にかかってきた色気のない電話。
ウインカーを出して車を路肩に寄せた。
色気のない短い会話を済ませ、ため息をひとつ。
電話を切りながら遠くを見遣ると、男がいた。
若い緑色の草と灰色の基礎。
老いた男が硬い基礎の上に寝そべっていた。若い緑に包まれて。
片手には缶ビール。
その景色になぜか目が吸い寄せられた。
老いた男はやおら立ち上がり、こちら側を向いてドボドボと立小便を始めた。
立小便の最中に私の車に気づき、運転手の私にも気づき、
私に向かってニヤリと笑ってみせた。
小便が済むと真顔に戻り、また同じ場所に同じ格好で寝そべった。
グビリと缶ビールをあおる。
何事かをつぶやく。
自分にもあんな生き方ができるだろうか。
人の目など意に介さず、自分が生きたいように生きる。
五月の晦日の昼下がり。
色気のない電話が見せてくれたドラム缶の向こうの白昼夢。
忘れることがないように私は、シャッターを切った。
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