彼のライブを聴くことはさして珍しいことではなかった。
正直いえば、また来たのねくらいに思ったこともある。
真夏の青い空と海をバックに従えた三陸海の博覧会のステージ。
もともと地黒の彼は夏の光を背負ってさらに黒く、ピアノと同化していた。
終わることを知らないような晴天の夏空に溶けてゆくピアノの音。
あの頃に、同じ音色は二度とないことをちゃんと理解していればよかったと今になって悔しく思う。
音のように空へ消えた彼。
しかしその魂は消えていない。
T-shirt:Tamaya Honda
Photo:Ayumi Kudou
Soul:Takehiro Honda