2012年4月29日日曜日

仔羊的立場で。

もう今更ゴールデンウィークに難癖つけたりしないよ。うん大丈夫。
多くの人が休む時が稼ぎどきだよって仕事があることだとか、休む人が経済を動かしていることだとか、日本人は働き過ぎだよとか、そういう人達が働いている日に休めるというメリットなんかも知ってる。皆まで言わないけど、大体理解してるもんね。

欲を言えばきりがない。きりがないところで欲を言うよ。

タイミングが合いますように。

これだけ。一個だけ。
一所懸命仕事をしますから、どうか叶えてください。
あわよくば、なんてありません。一個だけです。
神さま、大好きです。

2012年4月27日金曜日

とねりのあとがき風パスタ



執筆練習が進まない。

第一弾「バカみたい」の次に取り組んでいる怪奇譚が頓挫している。
理由は、文体の違いに因る遅筆からの落胆と戦意喪失。
もともと遅筆ではあるし、なにより練習なのだから、そこに落胆するのはお門違いというより、何様よってなもんだとは思う。
しかし、あなただってあるだろう。楽しそうと思って始めてみたけれど、想像以上の難しさ(めんどくささ)に教材を本棚にしまったこと。

私はスケートボードの練習を思い出した。
今は専らストリートでのトリックやプールが主流だが、おじさんがやっていた20年前は、パイロンを並べてのチックタックや、スタンス入れ替えからのパワースライドで十分楽しかった。
そこに現れた難敵オーリー。その時代でも出来なきゃダサいという程当たり前の技だった。
これがどうやってもできない。糸口は掴めたかなと思ったら、糸くずだったって感じの毎日。
以来倉庫に仕舞ったね、スケボー。つかドコ行った?

経験則から今でも思うのは、ちょっとしたことで急に「出来そう」になる瞬間に巡り合えるかどうかが、その後の上達具合を左右する、ということ。
スケボーでは、それに出会えなかった。それなりに練習したつもりだが、その瞬間には出会えなかった。
今回の怪奇譚練習にはそんな臭いを感じていた。
筆が進まない。三歩進んで二歩さがってさらに一歩下がる。
全然思うように進んでくれないので、戦意喪失のやる気ぽふっ。

そこで息抜きに、と書きだしたのが、第二弾「ここから海」だったのだ。
これがまた楽チンでね。筆がススムススム。

内容は相変わらずのニセ児童文学です。
今回のチャレンジは、
1、主人公にセリフを与えない進行。
2、”シリーズ”の意識。
3、ラブシーン(笑)
でした。

1はなんとかなったと見せかけて、やっぱり普通の物語をちゃんと書けるようになってから挑むべきだったかと。セオリーを無視して名前を使わないことに挑戦したが、読む側からすれば分かりにくいだけだったはず。

2についてはもらっていたヒントをそのまま課題にしたもの。世界や登場人物、設定なんかは共通で、主人公が変わるという設え。伝えられているかは置いといて、自分の中でのキャラ設定はできていたため、手応えはそれなりに。

3。これは難しかった。大人のそれではないので、ナマくしたくなかった。あとは恥ずかしさとの戦い。まぁ痛み分けってトコ。修練が要りますな。


さ、息抜きも終わったし、怪奇譚練習に本腰を入れねばだ。


……息抜きでまた児童文学に逃げたらごめんなさい。私。


協力:「たかしち」のカツスパ。

ここから海


 この街の花火大会は河川敷ではなく海でやる。普段は釣りをする人がちらほらいるだけの岸壁なのに、毎年この日だけはすごい人でごったがえす。
 出店も──テキ屋っていうのかな。ざっと三十軒は並んでいる。日はほとんど沈んでいるけれど、この一帯だけはそれぞれのテキ屋が吊るしているハダカ電球のせいで明るい。

 花火大会の開始まであと二十五分。会場は家族連れや中高生の友達グループ風な集団、あとはカップルなんかで相当賑わっている上に、それぞれのテキ屋が使っている発電機の騒音が、さらに人々の声を大きくさせている。

 これがこの街の夏の風景なんだよなー、と少しだけ懐かしい気持ちでテキ屋群を見渡した。定番のかき氷や金魚すくい、珍しいところでコンピューター手相占いというのもある。ダンボールに手書きで書かれた「チャレンヅボール」には笑ってしまった。焼きそばの店には二十人くらいの行列。焼きそばなんて、別に珍しくもないし、食べようと思えばいつでも食べられるのに、なんで並んでまで食べたいのだろうと思う。

 「ねね、焼きそば食べよっか」
 カラフルな水玉模様が描かれた黒いヨーヨーを右手に、左手で半分も食べていないリンゴ飴を持て余している「友達」が、ハダカ電球を映したキラキラ瞳でオレを見上げてきた。
 自分の中で焼きそばに対するダメ出しが終わったばかりなので、いくらキラキラビームを発射されたところで「そうだね」とはならない。行列に並ぶのはやっぱりめんどくさいし、すぐ二件となりには、誰も並んでいないお好み焼き屋もある。それを教えてあげようとしたところ、キラキラビームと一緒に、小首をかしげての「半分こしよ」を発動させた。
 気がつけば行列に並んでいたオレだが、これはいわゆる「負けるが勝ち」なのだと自分に言い聞かせた。

 「にーしーろーはーとっ」
 ごきげんな「友達」は、ひょいっと背伸びして、リンゴ飴を魔法少女ステッキのように振りながら、オレたちの前に並ぶ人の数を数え始めた。
 白地に涼しげな水色の波紋。波紋の主は赤い金魚。浴衣のことなんかよくわかんないけど、似合っているとは思う。そういえばこんな間近で同級生の浴衣を見たことなんて今までなかった。
 「21人だねっ。あたしたちは22人目だよ」
 22人目のなにがそんなに嬉しいのか分からないが、ぴょんぴょん跳ねてカッコカッコと下駄を鳴らした。
 さっきこの浴衣が似合っていると思ったのは、コイツもどこか金魚のようだからなのかもしれない。

 「ねーねー、学校うまくいってる? てか陸上続けてるんでしょ? よく帰ってこれたよね。あたしだって明後日から部活なのに。いつまでコッチにいるの? ちゃんと課題やってるんでしょうね。授業はついていけてる? すっごい心配なんだから。そういえばお父さん元気? ちょっとかっこいいよね、あんたのお父さんて。あー、また背伸びたんじゃない? 列進まないね」
 またもやのキラキラビームと一緒にぶつけられた一方的すぎる質問の数々を頭で反芻しつつ答えを探していると、「友達」は突然カクンと下を向いて声のトーンを落とした。

 「メールでは言ってなかったけどさぁ、あたしね──、えっと、吹奏楽部じゃん? でさ、いっこ上の先輩からね──」

 なんだなんだ。

 「──コクられたんだ」

 先に投げかけられていた質問群の答えもまとまっていないのに、なに? なんかあんまり楽しいことじゃないことを言われた気がする。
 「ユーホニウムやってて、わりとみんなから慕われてる感じ。かっこいいよねーとかって言ってる友達もいるんだー」
 いつのまにか紫色の帯にぶら下げられていたカラフル水玉黒ヨーヨーが小さく揺れた。

 「でもね、あたし、ごめんなさいしたんだ」
 そう言って髪に泳ぐ革の赤出目金かんざしが落ちるんじゃないかと思うほどの勢いでオレの顔を見上げた。
 行列に並ぶまでの表情とはちょっと違う、少し眉尻を下げたその笑顔に、なんだか息苦しくなった。

 後ろに並ぶおばさんに言われて前を見たら、行列はもうずっと先に進んでいた。後ろにすみませんと頭を下げ、ふたりして小走りした。
自分で分かるくらい顔が赤かったけど、「友達」の耳も金魚のように赤かった。


 屋台群から離れると普通に暗い夏の夜になった。人の数は普通じゃないけれど。
 「ここから海」と大きく書かれた幅二メートルほどの看板というか標識が、腰を掛けるのに丁度いい高さの土台に立てられている。そのコンクリートの土台が空いていたので、ふたりでそこに座り「ここから海」に寄りかかった。
 「あー、恥ずかしかった! ちゃんと前見ててよねーもー」
 なるほど、自分は下を向いていたから、前を見るのはオレの役目だったというわけだ。
 「罰として、このリンゴ飴を食べなさい」
 焼きそばはその後です。と、半分ほどになった食べかけのリンゴ飴とおあずけの刑をオレに寄こし、自分は「おーいーしーそー」と焼きそばパックを開けた。

 残酷な裁判長は、作りたての焼きそばをはむはむと食べながら、びっくりした? と尋ねてきた。
 オレは結構厚く案外固い飴に苦戦しながら、まさかあんな一気に列が進むととはね、と答えた。
 「そーじゃなくてさー、んー」
 質問の本当の意図は分かってるさ。
 ああ、びっくりしたよ。もちろんそのこと自体にもぎょっとしたし、友達ってものの定義を考え直さなきゃって思った。なんて口には出さなかった。あと、もっとびっくりしたことと、分かったこともあったな。

 「てゆーかさー、あんたってほんっと無口よね、っつか口下手。相変わらずよね。男友達と遊んでる時はそうでもないけどさ、今日だって久々に会ったってゆーのに、んーとかそうだねーとかしか言ってなくない? メールだってそうじゃん。あたしが五回書いて、返事が一回くればいいほうだし。ま、あたしも勝手に書いてるだけだけどさぁ」
 オレは無くなりかけている焼きそばを見ながら、ごめんと答えた。
 固くて甘いだけだった飴ゾーンの次は、やたらと酸っぱいリンゴが待っていた。この刑罰はなかなかのものだよ、裁判長。

 「にしても短いよね、あんたのメール。そんなんじゃ彼女ができても──」
 突然目の前の浴衣がピンク色に染まり、一拍遅れて轟音が響いた。
 オレたちは自然と同じ方向を見た。どよめく会場には拍手の音も聞こえる。
 くねくねの尾に遅れを取ってひゅーという長い音が続く。
 黒い空の奥から湧き出すように広がる水色の粒。広がりきる前に響く爆発音。粒はその色をオレンジに変え、さらに大きく広がった。
 質問を打ち切った大きな花火は、さらに次の花火を呼んだ。まるで、話題を変えなさいと言っているかのように。


 「夏だねー」
 次々と打ち上げられる花火を見上げたまま「友達」がしみじみと言った。腹に響く音に負けないようにボリュームを上げ、でも普段より少し落としたその声色は、去年までの中学生のものではなく、数カ月だけど「友達」が大人に近づいたことを感じさせた。
 そっと「友達」を見る。空に合わせて色が変わる横顔。長い睫毛の影が頬を移動する。よく見ればうっすらと化粧もしている。花火の音が胸を震わせた。
 「なに飲む? 喉乾いちゃった。焼きそば全部食べちゃったからジュースくらいおごるわ。あー、あんたはこの席キープしてて。コーラでいいよね」
 なんの返事も待たずカッカッカッカッと駈け出していった。落ち着きのなさは変わっていない。やっぱり数ヶ月じゃ大人にならないか。ひとり笑った。

 おごられたのはコーラではなく、いちごミルクのかき氷だったが、これが夏気分をさらに盛り上げてくれた。
 今年の花火大会の派手な連発は例年よりも盛大で、なんだか気合が入っている。スマイルマークやハートマークも織り交ぜた変わり種の花火が空の高いところで広がっているかと思えば、黒い影にしか見えない人垣の向こうでも同時に何十個もの花火が打ち上げられていた。
 きっと岸壁の先の方に行ったならもっと感動的だろうと、その後何度か移動を提案したけれど、その度に「ヤダ」と短い断りがあるだけだった。

 最初の打ち上げから三十分程経っただろうか。豪勢な連発の残響を耳と体に感じる静寂に、そろそろ終わりかなという雰囲気が漂った。海に背中を向けて歩き出す人も結構いる。
 「すごかったねー。楽しかったー」
 コンクリートの土台に座り、つま先で下駄をプラプラと揺らしながら、満足気な表情でオレの顔を見上げてきた。
 「来年も──」
 「友達」が言いかけた言葉はひときわ明るい閃光に消された。
 生まれてからこれまで見たこともない大きな花が夜空に咲いていた。
 一拍遅れて響く、低くて大きな音は、これまでのどれとも違う、重い空気の壁を思わせた。
 ただ呆気にとられ、見上げる空に、また一つ。
 濃紺の小さい光が、どこまでも大きく、広く拡がってゆく。どこまで拡がるのか不安になるほどの大きな花に、自然と体がのけぞった。
 不意に左手の甲に別の手を感じた。
 顔は空を見上げたまま、手を組み替えた。
 互いの指の間に指を滑らせ、ぎゅっと握った。
 驚くほど細い指はどこまでもやわらかだった。
 オレンジの小さな花がどこまでも膨らみながら緑色、さらにコバルトブルーへと変わり、視界の全てを埋め尽くした。
 分厚い音の壁がふたりにぶつかってきた。

 「たーまやー!」
 オレとつないだままの手を自分の口元に引き寄せ「友達」が叫んだ。
 オレもつないだままの手を自分の口に引っぱり寄せて叫んだ。
 「たーまやー!」


              * 


 故郷での短い夏休みを終え、また北海道での生活が始まった。朝の八時から夜の八時まで、文字通り、部活に明け暮れる毎日を送っている。

 「また明日な」
 仲間に軽く手を挙げ自転車を走らせた。見上げれば星のない空があった。
 夏の終わりの匂いがする帰り路の土手に自転車を停め、あの花火を思い出した。

 花火とともに、友達が終わった夏の夜。


 ふたり叫んだ「たーまやー!」のあと、会場は最後を飾るにふさわしい超ウルトラ大連発というべきフィナーレを迎えた。帰りかけた市民もまた足を止め、振り返り、往く夏に喝采を送っていた。
 すっかり「たーまやー!」が気持よくなっていたオレたちはまだ叫び足りてなかったけど、超スーパーウルトラ大連発に掛け声は合わないというか、タイミングが掴めなかったりして、結局それからは一度も叫ぶことができなかった。それがなんだか可笑しくて二人顔を見合わせ、そっと笑った。

 思い出されることは、もうひとつ。

 「──コクられたんだ」
 あの時本当にびっくりしたのは、アイツがコクられたことじゃなく、それを聞いた時の自分の狼狽。
 全身の血という血が、体温と一緒に足の裏から全部抜けていったような感じがした。二度と味わいたくはない異様な寒さだった。
 これって、今までのどんな友達にも感じたことがなかったこと。言ってみれば、特別なこと。
 だから分かった。アイツはオレにとって「友達」なんかじゃない、って。

 そしてあの大フィナーレの大連発──
 観衆の誰もが、空だけではなく海にまでも拡がる光の乱舞に目を奪われ、大音響と歓声で満たされた夜風の中、「ここから海」の標識がオレたちを隠してくれたんだ。


 あれからほとんど毎日メールが届くが、五通のうち一通には「ケイゴ!返信よこしなさーい!」とか「ケイゴへ。返信のやり方はおぼえましたか」などと書いてくる。アイツの顔が思い浮かんで楽しくなる。
 正直メールはめんどくさい。がんばって書いて送っても、三十秒後には「みじかーい!」と返信が来る。
 しかたがないので、オレは今日も電話をする。
 口下手だけど、アイツはそれを怒らない。

 コール音も鳴らないうちに声が聞こえた。
 「メールめんどかったんでしょ」
 苦笑しながら見上げた月にコッコの指を思った。







ニソップ物語 2
「ここから海」

工藤歩 著
2012年4月27日

2012年4月24日火曜日

好きと嫌い。


嫌いな食べ物は「ピータン」の一択。
これは何十年も変わらない唯一無二の王King of Kings

好き嫌いは殆ど無い。
殆ど無いのだから、一個くらいは有ってもいいよね。

じゃあ自分の一番好きな食べ物って?って考えるんだけど、「好き嫌い」というだけに「好き」も殆ど無いのだ。
だから有りがちな問いである「地球最後の日、あなたは何を食べますか?」にもちゃんとした答えを見つけたことはない。
確かに最後くらい食べたいものを食べて終わらせたいが、だからといってNYに渡航し、トライベッカのブーレイに行くことは無い。勿論行ったことも無い。評判だけを頼りに行って、それ程じゃなくて、がっかりして死ぬってのはヤだってことだ。

じゃあ可能な範囲の中で、なによ?って考える。
「出来がけの味噌汁」も上位だが、今ひとつ満足感に欠けるし、自分史の最終ページに「味噌汁」と記されるのもなんだか侘しい。

「あのケーキ」もなかなかだが、甘いものを食べると、必ずしょっぱいものが食べたくなるから却下。だからカヴァルニーのチョコも無し。

「寿司」かな。あの店の握り。これかな。うん。
あーでも、食べながら泣きそうだな、寿司って。

じゃ「焼肉」はどうよ。いいんじゃないかい。満足感の権化みたいなもんだしさ。焼肉食いながら泣くこともなさそうだ。どうせ死ぬんだから、健康のことなんか考えなくてもいいんだし。

でもなぁ、やっぱ寿司も食いたいよなぁ。握りじゃなく、ちらし寿司なら泣かないかもなぁ。

いっそ食べずに終わるってのもアリかもなぁ。

わっかんねぇなぁ。


ほぼ日にあった森山未來の言葉に、
──「嫌い」は、ぜんぜん愛のかたちだし。
好きも嫌いもないっていう状況が、いちばんつらいと思うんです。──
というのがあった。

もしかしたら私は、食べ物に対して愛が足りないのかもしれないなぁ、なんて想っちゃうよなぁ。
でも、ピータンに愛は無いよ。



2012年4月23日月曜日

死ぬまでにやっておくこと。

こうさ、パーっ!っと、
次の日のことなんか気にしないで、
それこそ浴びるように酒飲んで、
でも酒も肴も高級なもの揃えて、
くっだらねぇ話でバカみたいに盛り上がって、
涙出るくらい腹抱えて笑って、
笑っちゃうくらい酒が無くなっていって、
腹減ったっつって、
テキトーすぎる料理を作って、
それが絶妙に丁度マズくてまた笑って、
グラス倒してタオル探して、
すでに誰か寝ちゃってて、
誰が最後まで起きてるかなんてしょーもない賭けをして、
最初に寝たヤツが寝ゲロして、
テキトーにゲロ片付けて、
残ってる酒はキっツいウオッカだけになってて、
いつの間にかみんな寝ちゃってて、
誰が最後だったかなんて誰にも解らなくて、
気がつきゃイビキだけが聞こえる雑魚寝の朝で、
起きたのはまだ俺一人で、
二日酔いすら来てない普通の酩酊状態で、
床に転がる空き瓶の数に一人笑って、
水を飲みたいんだけど台所に行くのを面倒がって、
気の抜けたヌルいビール飲んで、
あくびしながら寝違え寸前の首をさすって、
時計見たら8時とかまた微妙な時間で、
二度寝にはイビキがうるさくて、
仕方ないからテキトーに片付けを始めて、
コーヒー淹れようして豆こぼしたりして、
まいいかって拾った豆でコーヒー淹れて、
さてコーヒー飲むかってところで起きだすヤツがいて、
ソイツのぶんのカップも満たして、
昨夜のバカ話を思い出したりして、
でも触れないほうがいい話は自然と避けてたりして、
寝ゲロのヤツのカピカピな口元を見て笑って、
もうこういうのしばらくいいなとか言って、
カーテン開けたらすっげ健康的な青空で、
ちょっとした罪悪感と変な充足感に満たされて、
一人また一人と起きだして、
ソイツらの分までコーヒー持ってきて、
便所に行ったヤツがこぼれゲロ発見して騒いで、
それ聞いてみんな笑って、
やっぱりこういうのしばらくいいなとか言って、
やっぱり寝ゲロの奴の口元はカピカピで、
カーテンじゃなく窓まで開けて、
気持ちいい風と部屋の酒臭い空気を交換して、
次は来年かななんて思って、
誰かが次はいつやるよなんて言い出して、
もういいっつーのと総ツッコミ食らって、
それでもみんな次があることを知ってる。
そんなバカすぎる飲み会。



2012年4月20日金曜日

23時54分

話したい。
ぼくの話を聞いて欲しいんじゃなくて、話したい。
そう思ったけど、ぼくには話す相手がいない。

話をしていたい。
誰かと同じ時間を一緒に過ごしたい。
そう思ったけど、ぼくは一人だ。


ひとりになりたい。
私の部屋に帰るのではなくて、どこか遠くに行きたい。
そう思ったけれど、明日も仕事が待っている。

ひとり風に吹かれていたい。
知らない海が見下ろせる赤土の丘がいい。
そう思ったけれど、私が休むわけにはいかない。


少年は狭い玄関でスニーカーを履き、暗い街へと歩き出す。
女は闇い玄関でヒールを脱ぎ、革張りのソファへ躰をあずけた。

コンビニの青白い照明が作る冷たい夜気。
少年は立ち止まらなかった。

低く唸るエアコンが吐き出す乾いた空気。
女は泣きたかった。



さかだち

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今日も、ありがとう。

2012年4月19日木曜日

区切り


一歩じゃまたげない区切りは、よじ登って乗り越えた。
そうしているうち体力もついてきた。


なんにしても、ひとつの区切りをまたぐというのは気持ちがいいもので。
またいだすぐ向こうには、また次の区切りが見えているというのも、また。

遠くの遠くにある区切りなんてぜんぜん見えないけれど、
近くに見えるひとつひとつの区切りを今日もまたいで進んでゆく。

横には見知った笑顔。

以前は見えなかった区切りが近くに見える。



2012年4月18日水曜日

せのび

本を読むのはメシを食うより好きだが、人に読ませるための物語を書くなんてことは、リアル中二病罹患中を除きほとんどなく、それならばメシを食うほうがマシだと思っていた。 ところがGuffに携わるようになって、文章を書く必要が出てきたのだ。それは言うまでもなくブログやfacebookに書くようなものではなく、ちゃんと気持よく読んでもらえる文章を、だ。
それでここのところ文章を書く練習をしている。先日の「バカみたい」もそれだった。斬新なストーリーなど思いつくはずもないので、とりあえず「正しい書き方」だけに気を付けたつもりだ。それだけなのに反省点が多い練習初回となった。やはり何事もやってみなければわからないものだ。

前回の「バカみたい」での課題は、カギ括弧の使い方と改行位置、そして女性視点で書くことだった。書ける人にとっては、なんて幼稚な課題だと思われるのだろうが、そのレベルなのだからしょうがない。女性視点でと決めた途端に、中学生向けな文章しか書けなくなったのが自分で可笑しかった。大人の女性は一生書ける気がしない。しかも強い女性を題材に据えたものは死んでも無理だろう。でもチャレンジだけはしようと思う。必ずやる。
ちなみに書いている時の気分だけはあさのあつこだった。色々とごめんなさい。

今また新たな課題に取り組んでいる。練習その2だ。
今日のこのblogは堅苦しい口調で書いているが、それは今取り組んでいる課題の所為だ。「所為」とか使ってるし。

とりあえず、当面はたくさん書こうと思う。それも当初立てた目標の一つだから。
パイロットの評価の一つに「飛行時間」があるように、書いた文字の量も全くの無駄ではないと思うから。それと並行して、もっともっともっともっと本を読まなければだ。


その前に、時間の調達も上手にならねば。


2012年4月16日月曜日

春の川井

ご用事ついでに町ぶら。
みなさんがイメージする「街」とは違います。
宮古市と合併するまでは「村」だったところです。


すでに閉店したお店。


看板娘でしょうか。
なかなかです。
伊達巻風ヘア。
今風の眉。
モードなアイシャドウ。
とりまくヒゲ。
出っ歯風襟。
ずれた腕。
なかなかです。

Tシャツにしたらどうだろう。


以上、澤野商店でした。


こちらは元民家。
なかなかの廃墟っぷり。

廃墟にも春は訪れる。


今度はたばこ屋。やはり閉店していた。
「村内のお店で買って豊かな村財政」
なそうだ。

なぜたばこ屋の窓周辺はタイル貼りなんだろう。


ステキだ。

麹も売っていたようだ。

文房具も売っていた。
いわばコンビニだったんだろう。

電話は「五番」時代を感じる。


春色の山。
春色とはいうけれど、こんな色のカーディガンは着ない。


以上。4月16日の町ぶらでした。




2012年4月13日金曜日

バカみたい

 保育所のみんなが書くクレヨン画は、チューリップやひまわりとかなのに、ひとりいつも黄色いフリージアを描いていた。そんな子供だった、と母から聞かされている。
 どういうわけか、あたしは物心ついたときからフリージアが好きだったようだ。それは今も変わっていないけれど、その理由は現在もわからないまま。うまく説明できないけれど、濃くも薄くもないちょうどいい黄色具合と、甘いのに爽やかな香りが理由かもしれない。ただそれだけしか挙げられないし、長年惹かれ続けている理由としては心許ないけれど、好きなんてそんなものなのかもしれないと、今は思う。


 一生に一度の二度とない日。着慣れた制服の胸には、大好きな黄色いフリージアのコサージュが居心地悪そうにくっついている。
 あたしはイライラしていた。


 ──ったく、ホント子供なんだから。


 小学校のときほど感動しなかった卒業式が終わり、戻ってきた教室。男子は黒板側、女子は後ろのロッカー側に陣取る形。このクラスはいつだってこうだった。
 ロッカーに寄りかかりながら、ずっとあたしの頭の中にいた言葉が口をついてこぼれた。
 「ったく、ホント子供なんだから」
 それは誰にも聞こえないくらいの小さなつぶやきのはずだった。
 「ん? コッコ、なんか言ったぁ?」
 あたしの小さなつぶやきを傍受したのは「体はちっちゃくても地獄耳」という、ものすごくトリッキーなキャッチフレーズを持つナミだ。
 今日の朝からずっと鼻声をキープしているナミは、あたしの数多い友だちの中でも特別な存在。小中高とずっと同級生だったというあたしたちの母親曰く「あなたたちは生まれる前から友だち」なそうで、これについてはナミもあたしも納得している。
 ううん、なんでもない、とあたしが答えかけた時、ナミはすでに今日何度目かわからない写メ撮影の輪の中に消えていた。小学生みたいにちっちゃくて、地獄耳だけど誰にでも優しくて、いい意味で尻が軽いのが彼女のいいところだと思う。


 あたしは軽いため息をひとつして、またイライラの発信源へと視線を向けた。黒板にはピンクや黄色、水色など、教室にあるだけのチョークを総動員させて黒板いっぱいに書かれた「卒業おめでとう」と、私たちクラスメイト全員の名前、そして担任岡田の名前がある。
 あたし自身もおめでとうと言われる立場なのに、自分たちでおめでとうと書くのもなんか変だし、卒業どころか転勤もしないらしい岡田の名前が、ひときわ大きく真ん中にあるのがすごく変だと思う。まあ、岡田がこのクラスの担任を卒業する、とかそんなことなんだろうけど


 ホントのところ、普段のあたしはこんなことでイライラしたりはしない。その証拠に、卒業おめでとうの黒板は、私が言い出してクラスのみんなに書いてもらったのだし、岡田先生のことも全然キライじゃない、ってかホント、まあまあいい先生だったと思っている。担任が「アタリ」だったクラスってそれだけで円満だったりするもので、ウチの教室の雰囲気も決して悪くはなかった。ってかホント、いいクラスだったって思っている。だから今までだってイライラすることは数えるほどしかなかったと思う。
 いいクラスだと思っている理由はもうひとつある。それは、あたしが学級委員長だったってこと。三十二票中二十九票を集め、二学期に続いてこの最終学期の学級委員長を勤め上げた人望と美貌だってある。成績はたぶんクラスで上から十番目くらいだから、ガリ勉女ってワケじゃない。なのに学級委員長というところが、あたしの自慢。美貌だって自称だけじゃないと思っている。実際彼氏に困ることなんてなかったし。一年生の時はまだ恋愛とか興味がなかったけど、二年生あたりから一人で帰る日なんて、少ししかなかった。高校受験で忙しいとかそんなので、まあ三年生の時には別に男なんて必要じゃなかったし──。
 とにかく、今まで一瞬たりともキレキャラどころか、イライラキャラだったことなんて絶対にない。むしろクラスのムードメーカー? ちょっとウザがられてるかなーって感じたときはあったけど、それなりに明るく元気にやってきたつもり。


 じゃあなんでそんなあたしが、今日こんなにイライラしているか。それは、みんなで書いたおめでたい黒板の前でバカみたいにはしゃいでいる男子たちのせいだ。
 卒業式の日だっていうのに、はしゃぎすぎて制服にチョークが付いているし、そのせいであたしの名前は消えかかっているし。
 なにもこんな日まで、前の晩のコント番組の復習をしなくてもいいのにって思う。
 特にケイゴ。アンタは今日この卒業式が終わったら、っていうか、もうすぐ、今にでも北海道に行っちゃうんじゃなかったの?
 こう、なんか、みんなの前で言いたいこととかあるんじゃないの、てゆうか、言うべきでしょうよ、もー。
 しょうがないんだから、と世話を焼きかけてイライラしていると、急にケイゴがこっちを見るから、すっごいびっくりした。と思ったら「シャキーン」ってセルフ擬音付きでケータイ取り出して他の男子に見せつけてるし。こっちを見たと思ったのは、ただの予備動作だったのか。まったくバカみたい。いっちょ前にスマホだし。なんか、あーもー!


 そうそう、学校はケータイ持ち込み完全禁止。それでもクラスの半分以上は持っていたし、学校に持ってきて自慢したはいいけれど、あえなく没収されちゃって一日半べそな友だちを何度も見てきた。でもさすがに今日は先生も没収なんてするはずはない。
 ケイゴはずっと持っていなかったはずだから、きっと中学卒業のタイミングで買ってもらったのだろう。シャキーンとかしたくなる気持ちもわからないではない。なぜなら、そんなあたしも中学三年間ずっと親にねだってきたけれど「まだ早い」だの「受験頑張ったら買ってやる」だとか言われて、先週ようやく買ってもらったばかりだからだ。もちろん一番欲しかったスマホを選んだし、買ってもらった日は、一日中、本当に一日中触っていたくらい嬉しかった。今もポケットに入れたままだし、今日だけで写メもバカみたいに撮っている。ケータイひとつで、こんなにも世界は色づくものなのね! そんなステキな感動は、一週間経った今でも続いている。
 でも今日のあたしは、やっぱりイライラしている。


 今日のようにぐちゃぐちゃなクラスも、昨日までの学級委員長なあたしだったら、ちゃんと仕切れていた。間違いなく。きっと、効率良く写メを撮りあえる段取りを組むことだってできたと思う。けど、もう卒業証書もらっちゃったし、こんな場を仕切るほど空気読めないあたしじゃないし。とか一生分のイライラとため息を使い切りそうになっているところに岡田先生が入ってきた。
 「ケイゴ! いいケータイ持ってんなあ! でも学校はケータイ持ち込み禁止だったね。はい没収しまーす」
 そんなベタすぎるにも程がある岡田ギャグが珍しく笑いをとった。みんな今日は優しい気持ちだからだと気づいているかな、岡田先生。
 みんなが席に着く頃、廊下が少し賑やかになってきた。親たちへの説明会みたいなのが終わって、教室へとやってきたのだ。岡田先生は、親たちも中に入るように勧めてから話しだした。


 「はい、みなさん卒業式おつかれさまでした。無事卒業できてよかったですね」
たったこれだけでも少しの笑いが起きる。やっぱり今日はみんな優しい。あたしは相変わらずイライラしているけれど。
 「いろいろ話したいことはありますが、みんな知っているとおりケイゴ、あ、くんがー、お父さんお母さんすみません、普段呼び捨てなんですー」
 私は教室の後ろに立っている大人の中から、何度もお辞儀をしたり笑っている二人を見つけた。明るいパステルピンクのワンピースに、ゴールドのネックレス。ペンダントトップはダイヤっぽい。顔が地味系なのに、ちょっと化粧が濃いような気がするケイゴ母と、グレイのスーツが似合う背の高いケイゴ父。ケイゴ父はケイゴがそのままおじさんになったようで、ちょっとおかしかった。
 「ということで、ちょっとみんなより早く学校を出るケイゴくんに、一言あいさつしてもらいます。ほらケイゴ。前に出て」
 さすがは岡田先生。私のイライラもちょっと落ち着いたかも。
 急な指名(私に言わせれば、そのくらい予想しておけ!)をされたケイゴは、えー! と言いながら一度机に突っ伏したけど、岡田先生に急かされ仲がいい友だちに冷やかされたりもして、おもいっきり照れた顔をしながら私の右側をすり抜けて教壇へ向かった。
 「えっとー、三年間、んー……楽しかったー、うん、です。あはは」
 なにそれ。バっカじゃないの?
 「んと、あっちの高校へ行くことになったけどー」
 ケイゴの大きな体に「め」を隠されて「卒業お でとう」になっている黒板。青いチョークで太く書かれた「お」、ピンク色の「で」、その間には、黄色いフリージアが全っ然似合わないケイゴ。そして、クラスみんなの名前がケイゴを囲んでいる。
 あたしの名前は消えかかっているけれど。


 「たぶん、正月とか、お盆とかはじいちゃん家に帰ってくると思うんでー」
 なんだろう。一旦落ち着いたはずのイライラが、また顔を出してきた。なんだろう。なんか焦る感じ。
 「返してもらってないマンガがあるけど、返さなくていいからねー、ヨッチー」
 笑い声が響く教室。あたしはただケイゴを見ていた。ちょっとだけ鼻が赤くなっているのもよく見える。一瞬ケイゴもあたしのほうを見た。
 前にもあったな。体育祭が終わって優勝旗を教室に運び込んだのは、応援団長兼リレーアンカーのケイゴだった。応援団長としてみんなの前で話をした時、やっぱり鼻がちょっぴり赤かったし、あの時もあたしのほうを見たのだった。懐かしいな。
 思えばケイゴはいつだってクラスの真ん中にいた。今日もやっぱり真ん中にいて鼻を赤くしている。クラス全員の名前に囲まれちゃってさ。


 フリージアが全然似合わないってのは、今日初めて知った。ま、当たり前だけど。
 他にもまだまだ知らないままのこと、いっぱいあるんだろうな。当たり前だけどさ。


 いつの間にかケイゴのスピーチは終わっていて、教室は拍手で湧いていた。
 ケイゴが自分の席へ戻るとき、あたしの右を通り過ぎるその瞬間にあたしを見ていたのは、きっと気のせいだろう。
 席に戻ったケイゴは、どうやらそのまま両親と行くようで、自分のだった机の空っぽ具合を確かめ、卒業証書の筒と卒業アルバムを抱えた。教室の後ろまで来た岡田先生はケイゴ父となんか話している。
 ケイゴが「じゃね、みんな。あはは」とか言って友だちらと握手していると、ヨッチー提案でケイゴを胴上げすることになった。机や椅子を引きずる騒音とともに教室の真ん中に即席の胴上げ会場が作られた。


 胴上げをするのは男子ばかりだと思っていたのに、女子もわーっと寄っていく。みんな笑顔だ。
 「ほらぁ! コッコもー!」
 ナミに手を引かれ、あたしもその集団に加わった。結局クラス全員での胴上げとなった。たぶん七回くらいは上がったんだと思う。教室の真ん中、クラスのみんなに囲まれて。
 四回目か五回目で、ケイゴの大きな体が天井近くまで上がった時には、みんな声を上げて笑った。ケイゴが「ひあぁぁ」とか裏返った変な声を出すから笑った。あたしも笑った。ケイゴには触れられなかったけど。
 胴上げから解放され、おっかねぇよ! と、鼻だけではなく、まぶたまで赤くしながら笑ったケイゴは、同じように鼻を赤くしたケイゴ父と、化粧の濃いケイゴ母と一緒に行ってしまった。


 校庭を真っすぐに突っ切ってゆく三人に手を振り続ける私たち。
 何度も校舎の二階を振り返り、おじぎをしたり手を振り返したりする三人。


 なんのリアクションもしないタクシーが行ってしまったあと見上げた空は、バカみたいに青かった。
 しかも二十度はありそうなバカ陽気だし。
 なんか、バカばっかりって感じよねー、なんて、あたしらしくもなく、ひとりしみじみしちゃってるし。
 ま、今日はそういう日だってことで、許します! あたし!


 気がつけば、あのイライラはしぼんでどっかに消えてしまっていた。


            *


 なんかさ、なんていうかさ、こう、なにかを期待してたってことは全っ然ないんだけど、正直、全くなんにもないとは思っていなかった、それは認める。だって「美人学級委員長vs優しげな応援団長」なんて、言っちゃえば人気者頂上決戦よ? めったにない夢の好カードじゃん! なのにケイゴのやつ、なーんもナシで行っちゃうんだもん。敵前逃亡にも程があるってものよ。やっぱ、同い年の男子なんて子供なんだよ、うん、そう、子供! でも、あのサヨナラはないよなあ。教室中みんながいる中じゃ、さ。あーあー。
 「ねぇ、さっきからなにブツブツ言ってんのよぅ?」
 結局帰る時間まで鼻声を貫き通したナミが、笑ってるんだか泣いてるんだかわからない顔で聞いてきた。
 「んー。やっぱあたし、ケイゴにさー」
 言いかけた時、突然ナミが腕をまっすぐに伸ばして、下手すぎるニワトリのマネをした。
 「コッコー!」
 それはにわとりのマネじゃなかった。
 ナミが指差すその先には下駄箱があった。もう少しちゃんと言えば、あたしの下駄箱を指差しながら、あたしのあだ名を呼んだのだった。
 靴の上にあったのはコサージュ。大好きな黄色いフリージアのコサージュだ。もちろんあたし自身のではない。そして、コサージュの下には二つ折りの紙。
 突然あたしの食道あたりで、どうやったら出せるのかわかんない聞いたこともないような音が鳴った。顔がくっつくほどそばにいる、トリッキーなキャッチフレーズを持つ親友がニヤっと笑った気配が、確かにした。


 きゃあきゃあ言いながら昇降口を飛び出したあたしたち。
 「一割は読む権利があるー」と、おサイフを拾ったときに使いそうなセリフを叫んでいる第一発見者と校庭のすみっこにある桜の木を目指して走った。


 もう、すぐに読みたかった。
 なにか確信のようなものがあった。そのなんだかわからない確信の正体を確かめたかった。
 でも、それ以上に、なんだか全っ然わかんないけど、今はとりあえず走りたかった。
 だからとりあえずバカみたいに走った。


 桜の木に背中をあずけた。
 上下する制服の胸元から漂う、大好きなフリージアふたつぶんの甘い香りが、早い呼吸につられて、あたしの中に入ってきた。
 見あげれば枝の間を埋めるバカみたいに青い空。
 きっとあたしたちは今、バカみたいな顔をしているに違いない。
 こんなバカ陽気でも全っ然咲く気配を見せないバカみたいな桜の木も降参するほど、見事な、堂々としたバカみたいな顔をしているに違いない。




ニソップ物語 1
「バカみたい」

工藤歩 著 

2012年4月13日

2012年4月11日水曜日

「情」


泣きむし。
私を表す代表的なアイコン。

よく泣いて、よく笑うのが私のスタイル。
泣き上戸であり、泣きたがりなのだが、それは昔からのこと。
一方、笑うということ。これは泣くのと違って、意識してそうしてきたこと。そうなったことだ。

もともとの私は、泣く以外の感情は、あまり表に出す質ではなかった。笑うことも例外ではない。
感情が表に出る前に、頭で考える子供だった。笑う前に一度頭で考えるから、少し冷静になってしまう。笑うことに躊躇いのような感情と、恥ずかしさがあった気がする。とても子供らしくないのだが、そうだったのだからしょうがない。さらにいうなら、喜ぶことや笑うことは、意識してやっていたふしがある。全くかわいくない。私が嫌いなタイプだ。
余談だが、怒ることは昔から少なかったように思う。ことここ数年は、まずなかった。といいながら、つい二週間前に怒ったばかりだが、あれは貴重なシーンだったのだ、とあの場にいた人は思い出にするといい。

話を戻そう。

人が好きだ。
人が喜ぶところを見るのが好きだ。そして、喜ばせたがりだ。それは昔からのこと。
やらしいことだが、嬉しそうにしているところを見たくて、行動を決めることが多い。
そんなわけで、自分は喜ぶのも笑うのも下手なのだが、他の人、特に大切な人が喜んだり笑顔になったりするところを見るのは、最高に好きなのだ。

幾らか年を重ねて、人前で喜んだり笑ったりすることを躊躇わずにできるようになった。
相手によるところが未だに多いが。それでも、一度頭で考えてからーという工程を省略することが可能になりました(当社従来品に比べ)。


そんな気持ち悪い男が、世界一気持ちいい仲間と一緒に、うんとこしょどっこいしょと作ったフリーペーパーGuffが、いよいよ明日、じゃなかった、日付変わったから今日、4月11日に発行されます。
怒ることも許してくれる仲間。頭で考えずに腹の底から笑いあえる最高の仲間。そんなヤツらと思いっきり頭を悩ませながら思いっきり楽しんで作ったもの。
いいな!ばかりじゃないと思いますが、私にとっては、あの世へもっていくものリストの上のほうに書がさります。
すみません、あまっちょろいのも昔からです。


Guffへ頂いたたくさんのご支援とご理解、なによりも、身に余るほどの応援に心からの感謝を込めながら宣言します。

宮古市発のフリーペーパーGuff[ガフ]、本日発行。
webでも全ページご覧いただけます。
http://www.guff-net.com/



─表紙とかの写真を貼るつもりだったのに、このPCには入ってなかったんだぜ!

情報はfbのGuffページで☆
https://www.facebook.com/pages/Guff%E7%B7%A8%E9%9B%86%E9%83%A8/144669928956217

2012年4月5日木曜日

下ノ庭ニ居リマス

苗木を植えて水遣らずだったYahoo。
池掘って鯉放さずだったExcite。
庭石置いたら落ち着いたfacebook。

あるもんなんだね、居心地がいい縁側って。
なにがいいって、垣根の塩梅がいい。
これが決め手だったなあ。

そんな気持良さにかまけてたら二年経っちゃった。
二年の間にすっかり慣れて、遠慮がなくなっちゃってた。
表札も出てて、顔も丸見えなのに、全裸だったもんな。
いや、もともとそんな性質ではあったから、自分じゃなんも困らないんだけど、
訪ねてきてくれる友人に悪くて。
「誰々さんったら、あすこによく出入りしてるけど、大丈夫かしらね」
なんてヒソヒソ話が聞こえるようで。

そんなことで、これからfacebookでは服を脱ぎません。
2012年4月5日、にそ丸fb脱脱衣宣言。

そして脱ぐのはここ、とねりの庭。
下々ノ者ノ下ノ庭。