2012年8月2日木曜日

8月の色

30年も前のことだ。
体育が不得意だった少年時代のぼくは夏のプールも嫌いだった。
意地悪なほど冷たい水は、フェンスからはみ出しているヨモギの色とさして変わらず、泳ぐのは朽木色のミズカマキリだけでいいと思っていた。

そのくせプールの時間はいつだってあっという間に過ぎていた。
紺色の水着と対照的な白い手足。パァッっと息つぎをする朱い口。
跳ねる水は澄んでいた。

手をかざして見上げる夏空は青くて切ない。
動かなかった夏の恋は、今も青いままで空にある。



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