2012年4月20日金曜日

23時54分

話したい。
ぼくの話を聞いて欲しいんじゃなくて、話したい。
そう思ったけど、ぼくには話す相手がいない。

話をしていたい。
誰かと同じ時間を一緒に過ごしたい。
そう思ったけど、ぼくは一人だ。


ひとりになりたい。
私の部屋に帰るのではなくて、どこか遠くに行きたい。
そう思ったけれど、明日も仕事が待っている。

ひとり風に吹かれていたい。
知らない海が見下ろせる赤土の丘がいい。
そう思ったけれど、私が休むわけにはいかない。


少年は狭い玄関でスニーカーを履き、暗い街へと歩き出す。
女は闇い玄関でヒールを脱ぎ、革張りのソファへ躰をあずけた。

コンビニの青白い照明が作る冷たい夜気。
少年は立ち止まらなかった。

低く唸るエアコンが吐き出す乾いた空気。
女は泣きたかった。



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