7月3日19時45分、曇り、無風。
月も見えない夜なのにまだ薄明るいのは、夏至から十日あまりだから。
国立公園浄土ヶ浜。
シーズン前ではあるが、人っ子ひとりいない景勝地というのは貴重なものだ。
秒ごとに光量が減ってゆく広い空間に立ち、耳を澄ます。
寄せる波とともに揺れる小石たち。
高く軽やかな音が湿気を帯びた夜気と混ざり、私の身体を抱いた。
三脚を据え、ファインダーを覗く。
暗く遠い被写体に迷うオートフォーカスを捨て手動で焦点を合わせシャッターを切る。
自然の揺らぎに混ざる機械音。
三十秒の沈黙で切り取る夏の夜がけ。
などと一人浸っていたのに、いつの間にか遠くにある人の気配。
こんな時間こんな場所に、って自分も同類なんだけど、ちょっとたまげた。今の今まで気づかなかったからね。
姿を黙視できる明るさじゃないし、話し声もしないし、足が石を踏む音だけが急に聞こえたって感じ
。
一人、いや二人だな。となれば上のホテルに宿泊しているカップルか?「キミのために国立公園を貸切ったぜだぜハニー」とか言われてジュンジュンしちゃう女子なのか?どうであれ今夜は二人だけの浄土ヶ浜島めぐりなんだろう。逝き先はローソク岩と潮吹き穴のみの。
おっさん妄想物語を炸裂させながら、またパシャパシャと岩の写真を撮ったが、さすがに真っ暗げになってきたので帰ることに。
機材を車に片付けて、Uターンがてらぐるりと周辺を照らしますとね、いないんだね、誰も。
あるんだよね、こういうことってさ。
会ってみたいもんだ。
そこは極楽浄土、どちらかというと君のほうが異界人(笑)
返信削除海水浴シーズンなんてえっらい迷惑なんだろな。舌打ち連発で。
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